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人工物なのか自然物なのかもわからない巨大な廟のある世界。そこに突如現われた、ヒトの目では捉えられぬスピードで人間を殺戮、捕食する真っ白な怪物。“白奇居子(シロガウナ)”と呼ばれるその異形の怪物の出現とほぼ同時に、養殖所で働く男、駆動電次の元にタドホミという女が訪れる。その直後、現われた白奇居子は死骸となり、その側には駆動が倒れていた…。(出版社より)
あらすじで多くの人が「???」となるが、とどのつまりは「仮面ライダー」そのもの。普段は普通の作業員だが、いざ敵が来れば人知れず変身し、あっという間にやっつける。そんな単純明快なヒーローアクションである。
でもあら不思議。『BLAME!』『バイオメガ』で知られる鬼才・弐瓶勉の手に掛かれば、そんな王道ヒーローモノも、
暴力と破壊と混沌に満ち溢れたヘヴィな作品にはや代わりだ。
”ダークヒーロー”と聞いてイメージしやすいのはおそらく「デビルマン」とか「バットマン」とか、なんとなく黒いカラーリングで、暗い世界観で描かれる作品が多いだろう。でも多分、そのノリでこの作品を読むと、ぶったまげる。なんというか、「ダーク」という言葉の意味というか、
「ダークっぷり」が段違いなのだ、とにかく。
グロテスクな敵キャラにグロテスクなヒーロー。人はゴミのように死に、
そこに主義も主張もメッセージ性も社会性も、1ミクロンたりとも存在しない。「俺が描きたいように描いてるんだよ」という作者の姿勢がバリバリと伝わってくる。
「ヒーロー=勝利」だとか「ヒーロー=必殺技」、はたまた「ヒーロー=ヒロイン」などという、
ぬるーーい常識や決まりごとなんて通用しない。そこを期待しているならば、読まないほうがいいかもしれない。既存の”ダークヒーロー”と共通するのはその「暗さ」のみ。まぁ、その暗さたるや常軌を逸しているものがあるけども。
そういえば、おそらくわざとやっているのだろが、
作中用いられる擬音表現にやや違和感を覚えた。私はとくに気にしなかったけれど、人によってはそうもいかないだろうから一応注意しておく。
さてさて、そんなマニア臭漂う本作だが、まったくもってその通り、間違いなくマニア向けだ。弐瓶勉氏の作品を読んだことがある人ならばともかく、未読の人がこの漫画を(というか弐瓶勉作品全てだけど)読んだら多分みんなついてこれない。間違いなく、ついてこれない。
氏の作品ではお約束の
「必用最低限ギリギリのわずかな説明」「つかみづらい世界観」「わかりづらいキャラクター」「あるかもわからないストーリー」「読者に不親切なコマ使い」といった要素が、徹底的に読み手を選ぶ。
氏の作品を批評するときはいつも書いていることだが、そうやって半端な読み手を選ぶ反面ハマった人を重度の依存症にしてしまう中毒性を秘めているのが弐瓶勉氏の作品であり、この作品ももちろん例外ではない。
文字通り読み手を突き放す圧倒的なスピード感と、絶対的に少なすぎる説明が生み出す、洗礼された世界観。これを読んだらそんじょそこらの”ダークヒーロー”が子供だましに見えること間違いなし。もし弐瓶勉の他作品を読んでいて、そして気に入った人で、本作を読んでいない人がいたら是非購入を勧めたい。
『BLAME!』のような圧倒的に引き込まれる世界観やエネルギーもないし、『バイオメガ』に比べても作りは荒く読みづらい。けれど、弐瓶勉が真っ向から「ヒーロー」を描いた本作は、それらとはまた違った魅力が溢れている。2巻完結という短さだし、今ではブック○フあたりに行けば100円で売ってあるので、二瓶勉氏もしくはこの作品に興味を持たれた方は是非。
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