持ち味の超展開をどう捉えるかが、評価の分かれ目山奥の寂れた村、雛見沢村に、とある事情から引っ越してきた主人公
前原圭一。彼は雛見沢村で、地元の個性豊かな少女たちとともに楽しい毎日を送っていた。しかし、雛見沢には圭一の知らない闇の歴史があり、少女や村人たちも何かを隠している節がある。そんななか、
「オヤシロさまの祟り」と呼ばれる謎の事件の存在が明らかになり、年に一度開かれるという
「綿流し」という祭の日から、圭一の平和な日常は徐々に
崩壊していく。
本作『ひぐらしのなく頃に 祭』は、同人作品としては異例の大セールスを果たしたサスペンスノベル「ひぐらしのなく頃に」をPS2に移植し、システムの変更や新シナリオを追加したものである。内容自体は原作(同人作品)と変わらないので、ストーリーについては「ひぐらし」全体の批評として書いていく。
なんとなく美少女キャラや萌えのイメージが先行しがちになっている本作品だが、
基本的にはサスペンスや
ホラー、
スリラーといった部類に入る。いくつかの章に分かれたシナリオを読んでいき、それぞれの章での謎、そして最後には作品全体の「謎」へとつながっていく。プレイヤーは果たして、遅い来る「惨劇」を回避し、「運命」に打ち勝つことができるのか、というのがゲームの概要。
こうして書くとシリアスなサスペンス作品のようだが、最初に書いたように、それとは異なるイメージを非常に抱きやすい。その原因として、このゲームの基本的な構成がある。
まず、主人公圭一の「平和」な日常が徹底的に描かれる。それこそ美少女ゲームさながらに、いろんなタイプの女の子に囲まれてのそれはそれは楽しい日常がけっこう長く描かれるのだ。だいたい、この「平和パート」で飽きたり、ありきたりな美少女だと思ってプレイをやめたりする人が多いのではないかと思う。その先には衝撃の展開と濃厚なドラマが待っているというのに、とてももったいない。
まずプレイヤーに、この徹底的に平和な日常をしっかりと見せ付けることで、その後に訪れる
「惨劇」が、より衝撃的で恐ろしいものになるのである。また、注意深く見ていると、その平和パートにもさりげなく謎を解くヒントや物語の重要なカギが隠されていたりするので侮れない。
さてここで「謎を解く」という言葉を使ったが、このゲームはサスペンスノベルであり、解くべき「謎」が存在する。それがいったい「何」なのかは、プレイしてから理解してほしい。ただ、普通に推理してもほとんど100%裏切られることは間違いない。第一章「鬼隠し編」をプレイした時点での、「正答率」(何の正答かは秘密)は1%未満だったという。
ここで、このゲーム最大の魅力であるその
「豹変性」について書く。これまでに述べたとおり、このゲームは平和一直線の日常から、あっという間に悪夢のような非日常へと転落するその「豹変」ぶりが最大の魅力である。
しかし、(プレイした人はわかると思うが)あまりにも突飛すぎるシナリオは、人によっては受け付けられないのも確かだ。ネタバレはできないが、ストーリー後半にかけての超展開はもはや予想がどうとか推理がどうとか言う次元を超えており、ジャンルそのものが覆されえると言っても過言ではない。
その怒涛の展開に身を任せ、「やられた!」と思うことができるならば、この作品は相当な傑作になるだろう。しかし、あくまで「サスペンス」というジャンルにこだわってプレイしていた人にとっては、とても納得できるものではない。ネタバレは本当に怖い作品なのであまり踏み込んでは書けないが、割り切ってプレイできるか否かで、最終的な評価が大きく分かれるだろう。
私個人としては、その問題の「結末」に対しては肯定している。「おおう、そりゃないがな」と思いながらも、割とクリア後は爽快な気分だった。心地よく裏切られた、というのもあっただろうが、私としては、それ以前に
ストーリーとキャラが非常に満足できるものだった、というのが強い。
単純に、各章での「お話」そのものがとても面白かった。とりわけ、人間ドラマ的な部分が非常に感動できた。登場するキャラクターが個性的で、かつしっかりと作られているために、まずキャラそのものが好きになったし、そんなキャラが繰り広げるドラマにも大いに共感できた。
絶対的にネタバレしてはいけない作品故に、こうしたネタバレなしのレビューもかなり書きづらいのだが、あえて言いたい。この作品の面白みは、
前半は「恐怖」であり中盤は「感動」、そして終盤には「燃え」「泣き」へと変化していく。この変化の意味が知りたいと思ったあなたは是非プレイしてみよう!
と、ここまでが「ひぐらし」全体に対しての評価。ようは、「話はとっても面白いよ」と。では、なぜ評価の点数自体は低めなのか、その原因は、この『ひぐらしのなく頃に 祭』にある。
私は原作のほうもプレイしたのだが、なんと一個人(サークル)で制作した原作よりも、怖さ、感動の二点において劣っているのだ。たしかに原作に比べ絵は綺麗になった(原作の絵は非常に独特)、しかし、萌えに走りすぎている上、表紙の冷たくミステリアスな雰囲気は肝心のゲーム中では見ることが出来ない。CG(盛り上げどころで登場する一枚絵)も全然怖くない、むしろ外している。
あと1番気になるのは音楽だ。有名アーティストを起用したのはいいとして、劇中のSE(効果音)やBGMが酷い。
同人作品よりもチャチとはいったいどういうことか。オリジナルの追加シナリオもイマイチだし、原作では最終章だったシナリオも収録されていない(現在は追加されたものが新発売されている)。気軽にプレイしたい、という人以外は、
原作をプレイすることを激しくお薦めする。
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