青年漫画批評『バイオメガ / 弐瓶勉』【殿堂入り】
『バイオメガ』
![]() | BIOMEGA 1 (1) (ヤングジャンプコミックス) 弐瓶 勉 集英社 2007-01-19 by G-Tools |
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西暦3005年。7世紀ぶりに火星への有人飛行を成し遂げた人類。水も酸素もない廃墟と化したかつての入植地において、宇宙飛行士達は1人の女性を発見する。
その後、帰還中に探査船は地球周回軌道上で大破。発見された乗組員の遺体は未知のウイルスN5Sに冒されたまま、軌道上を漂い地上に胞子を撒き散らしていた。
半年後の地球。ドローン禍と呼ばれるバイオハザードで混乱する洋上の人工島9JOに、合成人間・庚造一が送り込まれる。彼は幸先良くN5Sウイルスに適応した少女イオン・グリーンを発見するが、その矢先に対立するCEUに彼女を拉致される。彼がイオンを追ううちに、CEUの上位機関DRFの企てる陰謀が進行してゆく…
この『バイオメガ』は、鬼才、弐瓶勉がおなじみのハードな世界観で描くハードコアSFアクション作品だ。作品の舞台は近未来、「ドローン禍」と呼ばれるバイオハザードが発生し混沌と化した地球。二つの大企業の陰謀と、全ての鍵を握る少女「イオングリーン」を巡る激しい戦いが描かれる。
この「弐瓶勉」という作者の作品を読んだことがある人ならばわかるだろうが、最高に読み手を選ぶ作品を描く作家だ。世界観や人物などに対して説明がほとんどと言っていいほど無いし、そのくせどの作品も非常に独特で作りこまれた設定や世界観だったりする。まぁ、それが魅力でもあるのだが、漫画初心者やこういった漫画に慣れていないと読みづらいことこの上ないはず。
多分本屋でぽんと手にとって、十数ページ読んで「うーん?」と置いてしまうような人が多いであろう本作だが、この作品がどういった魅力や見どころを秘めているかを多少知っていれば、そうやってこの作品の面白さを知らないまま読むのをやめたり、気にはなっていたけれど一歩が踏み出せなかった人が減ると思うので、そこを書いていこうと思う。
一見様お断りな雰囲気をバリバリ出しまくっているこの作品だが、その面白さは非常に根源的でシンプルだったりする。
わかりやすいところで言えば、仮面ライダーやスーパーマンあたりをイメージしてもらえばいい。強力な武器や体術で悪者をバッタバッタとなぎ倒し、イカしたバイクで疾走する。それに、頼れる相棒と可憐なヒロインがセットになれば、誰もが憧れ、興奮したヒーローが出来上がる。

この作品の面白さも実はそこにあるのだ。ただ、敵キャラの存在感や威圧感が桁違いで、外見がちょっとだけグロテスクになって、登場する兵器などもかなりぶっ飛んではいるけども。映画「マトリックス」と「バイオハザード」を足して、「ネット空間」という概念を引いた感じ(わかりづらいか)。
あと、これは弐瓶勉の作品全てに言えることだが、読み手の「想像力」をかき立てるコマ使いも大きな魅力。ことアクションシーンでは、コマからコマへ流れるスピードが非常に速い。というのも、コマとコマの間で「何が起こったのか」を、前後のコマや話の流れから、想像力を働かせながら読まなければならない(強制ではないが、そうして読んだほうが楽しめる)。このコマ使いが、アクションシーンや漫画全体に非常にスピーディな印象を与えている。

会話自体は非常に少ないものの、描かれている絵をしっかりと見てみると様々な情報が得られる。「会話が少ない!」「意味がわからん!」「ストーリーってあるの?」とか言う人は、今一度、しっかりと読み込んでみよう。
また、作者が過去に建築関係の経験を積んでいる点にも注目。常識の域を遥かに超えた規模の建築物や巨大な物体と人物との対比が、その建築家の経験からかとても上手い。大きいものを「本当に大きく見せる」スケール感にも注目だ。

さて、この漫画が一見さんの手にもとって貰えるように色々と書いてみたが、どう頑張ってもある程度読み手を選ぶ作品ではある。しかし、一度ハマってしまえば、これほど面白い漫画は無いと感じるはずだ。
凄まじい威力を持った兵器の数々に、グロテスクながらもどこかスタイリッシュな敵キャラ、クールなヒーローのツボをきっちりと抑えた主人公、氾濫する専門用語、読み手を突き放さんとばかりに加速するアクションシーン・・・・・難しいことは後にして、とにかくシンプルに「格好良さ」を「感じて」もらいたい。
【作品データ】
作者 :弐瓶勉
出版社 : 集英社
掲載誌 : ウルトラジャンプ
発表期間: 2004年 -
巻数 : 全6巻完結
コミックの購入はブックオフがお薦め。安いです。

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- 2008/07/13
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コメント一覧
断言は出来ないけど、『東亜重工』つながりで、どうも関連があるらしい前作『BLAM!!』についても言及してほしかった・・・。
>>にしかぜさん
コメントありがとうございます。
前作「BLAM!!」も全巻所持しており、BLAMについての記事制作およびバイオメガのレビューの修正もしなければならないとは思っているのですが、今はアニメレビューのほうから重点的に書いていて漫画の記事については後回しとしている状態です。
部活や勉強などの関係でなかなか時間がとれず、またこのブログで扱っているカテゴリが多すぎるという点もあり、なかなか手が回りません。いつになるかはわかりませんが、BLAMについてのも書かせていただきます。